ある白黒猫の物語


Authors
mihopony
Published
7 months, 5 days ago
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星盗
桃寝ちのい

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る白黒猫の物語

昔々、とある場所に魔法使いの猫の双子がおりました。片方は絹のような毛皮の白猫で、もう片方は夜空のような毛皮の黒猫でした。 ふたりはとても仲良しで、立派な魔法使いになって沢山の人の役に立つ事を夢見て一緒に旅を続けていました。そんな2匹でしたが、ある日黒猫が突然重い病気にかかってしまいました。 白猫はきょうだいをなんとかして助けようとしましたが、白猫の懸命の看病もむなしく黒猫は息を引き取りました。

白猫は三日三晩泣き続け、死にものぐるいになって黒猫を蘇らせる術を探しました。そして、たまたま手に入れた古い魔導書の中に「死んだ者の魂を物に定着させる術」を見つけました。白猫は早速その術を自分の作ったてるてる坊主に試してみます。するとそれは見事に成功。黒猫はてるてる坊主のような魔法動物として蘇りました。白猫はきょうだいとの再会を非常に喜び、黒猫も自分を蘇らせてくれたきょうだいに感謝しました。

しかし喜んだのも束の間、今度は白猫が苦しみ始めます。これは使った者の身体を蝕む禁術だったのです。禁術で蘇らせた命の対価は同じ命でしか償えません。やがて白猫は身体中から血を大量に噴き、蘇ったばかりの黒猫の前で息絶えました。黒猫は、自分の目の前できょうだいの白い毛皮が真っ赤に染まるのをなす術もなく見ている事しか出来ませんでした。

黒猫は禁術を使い、自分が再び犠牲になる事で白猫を助けようとしましたが、禁術で無理やり蘇った身体にはもはや死ぬ事さえも許されていませんでした。黒猫は深く絶望しましたが、やがて白猫と一緒に叶えたかった「立派な魔法使いになって沢山の人の役に立ちたい」という願いの事を思い出します。自分に残された役目は死んでしまった白猫のぶんまで人の役に立つ事だと考えた黒猫はひとりで旅に出る事を決意しました。